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交通事故事の損害賠償

交通事故事の損害賠償

 1.傷害・後遺障害事故の場合

治療費

 

2.死亡事故の場合(死亡まで入院したケース)

 

 3.損害額算定基準(3つある)

裁判所基準が一番高い

弁護士が入らないと(1)又は(2)の低い基準でしか賠償金は払われないが、弁護士が入ると(3)の裁判所基準で賠償金を取ることが可能となる。そこに弁護士を介入させる意味がある。

 

4.損害賠償請求項目の留意点

医師の指示がある場合は認められる。

医師の指示があり治療上有効かつ必要な場合がある場合は認められるが、全額が認められるとは限らない。

必要性、相当性がある場合は、認められる。

社会通念上相当なものであれば認められる。

(例)大阪地判 平成2.8.6 右下腿骨開放骨折の被害者の手術に付き、医師・看護婦への謝礼30万円を認めた。

入院により進級が遅れた為、余分に支払った授業料は、認められる。又、学業の遅れを取り戻す為の補習費も相当な範囲で認められる。塾の費用も認められる。

医療上必要な義足、松葉杖、車椅子等は認められる。自動車の改造や自宅の改造も必要かつ相当な範囲で認められる。将来発生するこれらの費用も認められる。

 

5.成人後見人費用

 

6.葬儀費用

葬儀費用は150万円を上限として認められる。香典返しは損害と認めない。

7.遅延損害金

  年ごとにより事故日から発生する。

 

8.逸失利益(死亡によるものも含む)

  逸失利益は後遺障害の場合は症状固定日の翌日から、死亡の場合は死亡した翌日から発生する。

 

9.弁護士費用

  弁特がある場合は300万円までは保険でカバーできる。弁特がない場合には依頼人に請求する。

 

10.休業損害と逸失利益について。

事故日から症状固定日までが休業損害であり、症状固定後は後遺障害による逸失利益の対象となる。

 

11.給与所得者

休業損害の計算は、事故前3ヶ月の給与合計額を90日で割り1日当たりの休業損害額を出して、それに休業日数を掛ける。税金は控除せず、その他の手当てを含む。事故の為に遅れたもしくは実現しなかった昇給、もしくは事故の為に降格となり減収あった場合も因果関係が証明出来る限り損害となる。有休休暇を使用した場合は、休業があったものとして請求できる。有職主婦の場合は、賃金センサスによる平均賃金、もしくは実収入のうち高いほうの収入による。

 

12.事業所得者

現実の収入減があった場合に認められる。なお、自営業者、自由業者などの休業中の固定費(家賃,減価償却費、従業員給与など)の支出は、事業の継続、存続のために必要やむおえないものは損害として認められる。

 

13.赤字申告、不申告その他

赤字申告だが、親族に給与払っている一定の収入があると認められる場合、その他実際の額の算定が困難である場合は、平均賃金センサスを参考にする。

 

14.固定費

上記の通り確定する売上から固定費を引くが、休業期間中も発生がやむ得ない固定費については控除しない。例えば減価償却費、地代家賃、従業員給与等、保険料等。

 

15.利益率

事業所得者の休業損害の選定にあたり、当期別の利益率を考慮することがある。その資料として総務局、統計局、個人企業経済調査年報等がある。

 

16.事業専従者給与が確定申告に含まれている場合は、実際に労務を提供している場合は経費として休業損害からは控除される。実際の労務の提供がない場合には、当該給与額も含めて休業損害となり得る。休業した者に代わり。代替の者を臨時に雇用した費用は休業損害に含まれる。青色申告控除額は、実際の経費でないから所得申告額に加算する。青色申告控除の場合は事業専従者の給与は全額控除されるが、白色の場合は一部、100万円の場合は86万円のみ控除される。白色申告者が専従者の労務実態が薄いとして控除せずに休業損害を算出する場合は、確定申告書の申告額に白色控除者の給与控除分、上記の例では86万円を加算する。

 

17.会社役員の休業損害

役員報酬には労務の対価の部分と利益配当の部分があり、企業主兼役員の場合等は利益配当の部分が相当高いので、例えば、労働の対価の部分50%とする。他方従業員兼役員の場合実質的な従業員制が高い程労務対価の比率が大きくなる。例えば労働の対価の部分80%とする。利益配当の対価はその役職についている限り取得されるべきもので損害に入らない。尚、交通事故による勤務不能にもかかわらず、役員報酬を継続して会社から受け取れていた場合は、休業損害が発生しない。

 

18.名目的役員

勤務実態がない名前だけの役員の場合は、休業損害を認められない。

 

19.企業損害

法人といえ実態が個人である小規模法人の場合は、法人自体の損害が相当因果関係のある損害として、請求可能損害に含まれる。個人と法人の経済的同一体場合に認める立場が通説判例。

 

20.専業主婦

収入がないが、主婦が家事に専業で従事している場合は。女子全体の平均賃金によって損害があるとして請求を認めるのが判例である。尚男子であっても家事従事者の場合も同様。

 

21.兼業主婦

パート内職等で収入がある場合、収入が女子平均賃金を上回る場合はその収入を基準にその休業損害を計算し、低い場合は女子平均賃金を休業損害とする。

 

22.学生

アルバイトをしていればその分休業損害になる。又、就職が内定していて、事故の負傷のために就業が遅れた場合、事故の治療が原因であることが証明できれば休業損害として賠償請求できる。

 

 

23.社会保険

交通事故の傷病治療にも健康保険が使用できる。加害者に損害賠償請求するのは健康保険治療費の自己負担部分。(要確認)

交通事故による人身事故が業務上、又は通勤上生じた場合、自賠責に先行して所轄労働基準監督署に第三者行為災害届等の必要書類(同所所定の用紙による)を提出することで受給できる。

 

 

24.労災保険と任意保険の関係

  実務において、被害者が仕事中、または、通勤中に交通事故で負傷し、被害者の過失が概ね30%以上の場合は労災保険を使用する。また、加害者が任意保険に加入していない時も労災保険を使用する。しかし、加害者の過失が大(概ね80%以上)で、加害者が任意保険加入している場合では、任意保険を優先して使う。

 

25.労災保険の休業補償給付

休業補償給付では、給付基礎日額の100分の60に休業日数を掛けた額、そして、休業補償給付に給付基礎日額の20%の「休業特別支給金」が加算されます。したがって、休業基礎日額の80%の補償を受けられることになります。

 

26.健康保険続き

 

27.損害賠償請求に必要な書類

後遺障害診断書は、保険会社の書式がある。

 

28.交通事故証明書後遺障害とは

後遺障害とは、障害の治療を続けているにも関わらず、治療効果が期待できない状態となり(症状固定という)、将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的障害をいいます。医師の診断により認められる必要があり、かつその程度において一番重い一級から一番軽い十四級まで、またさらに軽い無等級まで分類され、損害保険料率算定機構の自賠責損害調査事務所にて等級の認定が行なわれます。後遺障害等級認定の申請は、自賠責保険に被害者請求する方法と任意保険会社から事前認定する方法があります。

下記が公表されている自賠責保険の後遺障害支払基準の一部です。

 

(1)後遺障害に対する慰謝料等の額は、該当等級ごとに次に掲げる表の金額とする。

1)自動車損害賠償保障法施行令別表第1の場合

第1級

第2級

1,600万円

1,163万円

 

2)自動車損害賠償保障法施行令別表第2の場合

第1級

第2級

第3級

第4級

第5級

第6級

第7級

1,100万円

958万円

829万円

712万円

599万円

498万円

409万円

第8級

第9級

10

11

12

13

14

324万円

245万円

187万円

135万円

93万円

57万円

32万円

 

後遺障害に対しては、(1)逸失利益の損害賠償および慰謝料の請求が可能です。逸失利益は労働能力がどの程度喪失されたかを基準に定めます。厚労省が通達で出している下記労働能力喪失率表が参考にされますが、これが絶対的なものではなく、個々に事情により法的な観点から査定されますが、そのためには弁護士による査定や保険会社との交渉が必要となり、また裁判になることもあります。

労働能力喪失率表

自動車損害賠償保障法施行令別表第1の場合

障害等級

労働能力喪失率

第1級

100/100

第2級

100/100

 

 

自動車損害賠償保障法施行令別表第2の場合

障害等級

労働能力喪失率

第1級

100/100

第2級

100/100

第3級

100/100

第4級

92/100

第5級

79/100

第6級

67/100

第7級

56/100

第8級

45/100

第9級

35/100

第10級

27/100

第11級

20/100

第12級

14/100

第13級

9/100

第14級

5/100

 

 

 

 

 

 

 

 

Ⅱ  交通事故で最もポピュラーな「むちうち(頸椎捻挫)・腰椎捻挫」の説明

 

むち打ち症は俗称で,医学的には外傷性頸部症候群,頸椎捻挫の傷病名が付けられています。

交通事故の場合に追突や出会頭の衝突で,頸部が過屈曲,過進展,過側屈,過旋回の4つの強制運動を受けた際に,骨,椎間板,筋肉,靭帯,神経などの組織に生じる損傷により,頚部痛,上肢のしびれ・知覚異常,頭痛,眼がかすむ,息苦しさ,めまいなどの症状が生じると外傷性頸部症候群,頸椎捻挫と診断されます。

初診の整形外科では,「頚椎捻挫にて今後2週間の加療を要する。」などの診断書が出ますが,なかには,治療が6カ月から長い期間では1年以上治療が続く場合があります。

一般的に,治療が6カ月を超えれば症状固定とされ,後遺障害の等級認定の申請をします。

頸椎損傷は次の4つに分類されます。

 

Ⅰ 頸椎捻挫の型

  頸椎捻挫の症状によって以下のように分類しているが,混合型も多くある。

 1.頸椎捻挫型

   頚部後面の痛,肩痛,背部痛,上肢のシビレ,頭痛などの自覚症状を中

心とした症状。その他,肩や背中の筋肉の凝り,頚部の運動制限や運動時

痛が生じる。

   はっきりした他覚的な神経症状がない。また,明らかな知覚・筋力の低

下がない。

   後遺障害は認定されても14級9号です。

 

 2.神経根症状型

   頚部の椎間板のヘルニアや軟部組織の腫脹により頸椎の神経根が圧迫さ

れて,その神経の支配領域の筋力低下・筋委縮,支配領域に一致して現れ

る自発痛,放散痛,知覚障害(知覚脱出,鈍麻)が発生し,神経根が関与

する上肢腱反射の異常(減弱や消失)。

 症状は,圧迫されている神経の支配領域の痛み,シビレ,脱力が発生す

る。

 MRIにより圧迫されている神経根が確認出来,その神経の支配領域に

痛み,シビレなどがあれば,医学的に証明出来たとして,後遺障害12級

13号が認定されます。

 実務に於いては,頸椎捻挫の患者100人中2~3人が認められる程度

です。

 

 3.バレー・ルー症状型

   一般的には自律神経のうち交感神経の異常に起因していると考えられて

いる。

   診断は,自覚症状を主体として,他覚的所見に乏しい。次に星状神経節

ブロック注射により症状の改善が見られることがある。

 症状は,①めまい,耳鳴り,耳閉感 ②目がかすむ,目の疲れ,視力低

下 ③心臓部の痛み,脈の乱れ,息苦しさ ④かすれ声,嚥下困難,喉の

違和感 ⑤頭痛,頭重

 後遺障害としては14級9号認定かどうか?

 

4.脊髄症状型

  頸椎に脱臼や骨折が生じて脊髄が損傷される。

  症状は,上肢の運動障害,上肢の腱反射の異常・知覚障害,下肢の歩行

障害,下肢の腱反射の異常・知覚障害,排尿便の失禁,尿閉,便秘などで

ある。

 後遺障害としては9級以上の認定が考えられます。

 

 5.頸椎の変性変化及び類似疾患

 (1)椎間板ヘルニア

    椎間板の線維輪から髄核が脱出してそれによって脊髄あるいは神経根

を圧迫する状態をいう。

 (2)椎間板膨隆

    線維輪は前方より後方が薄くなっており,変形して突出する状態をい

う。脊髄は圧迫していないが,神経根を圧迫する場合もある。

 (3)変形性脊椎症

    椎体辺縁の骨性増殖(骨棘)が生じるもので,椎体の前方でも後方で

も小さいものは無症状が多い。

 骨棘形成だけでなく,椎体の骨硬化,椎間腔狭小化,脊柱管前後径の

狭小化なども発生する。

 MRI,CTよりもⅩPの方が良く判る。

 骨棘が椎間孔の方向に生じている場合は,神経根を刺激することがあ

る。

 (4)後縦靭帯骨化症(OPLL)

    椎体の後方にある後縦靭帯が骨化して脊柱管を圧迫するため脊柱管が

狭窄される。後縦靭帯の骨化が進行すると脊柱管が増々狭窄して脊髄が

圧迫される。

 (5)脊柱管狭窄症

    脊柱の発達途上から,脊髄を入れる空間である脊柱が十分に大きくな

らない場合があり,(直径12mm以下)これを脊柱管狭窄という。

この脊柱管狭窄により,脊髄や神経根が圧迫され,神経症状が発現し

た病態(傷病)を脊柱管狭窄症という。

 

Ⅱ 腰椎捻挫について

  腰椎捻挫には頸椎捻挫の様に症状等による分類はありません。

  腰椎捻挫は腰部に交通事故による外力が加わった衝撃で,腰部の軟部組織

(筋肉,靭帯,椎間板等)が損傷して腰痛,下肢痛,下肢のシビレ,下肢

の足指の痛み又はシビレなどの症状が発生します。

 

 1.腰椎の変性変化及び類似疾患

   (1)椎間板ヘルニア

    椎間板の線維輪から髄核が脱出してそれによって脊髄あるいは神経根

を圧迫する状態をいう。

 (2)椎間板膨隆

    線維輪は前方より後方が薄くなっており,変形して突出する状態をい

う。脊髄は圧迫していないが,神経根を圧迫する場合もある。

 (3)変形性脊椎症

    椎体辺縁の骨性増殖(骨棘)が生じるもので,椎体の前方でも後方で

も小さいものは無症状が多い。

 骨棘形成だけでなく,椎体の骨硬化,椎間腔狭小化,脊柱管前後径の

狭小化なども発生する。

 MRI,CTよりもⅩPの方が良く判る。

 骨棘が椎間孔の方向に生じている場合は,神経根を刺激することがあ

る。

 (4)脊柱管狭窄症

    脊柱の発達途上から,脊髄を入れる空間である脊柱が十分に大きくな

らない場合があり,(直径12mm以下)これを脊柱管狭窄という。

この脊柱管狭窄により,脊髄や神経根が圧迫され,神経症状が発現し

た病態(傷病)を脊柱管狭窄症という。

 

 (5)腰椎分離症 

    腰椎椎弓を構成する上・下関節突起の間の関節突起間部の連続性が断

たれた状態をいう。分離した椎体と椎弓は安定性を失い腰痛を発生する

場合がある。

 

Ⅲ 後遺障害等級認定申請の留意点

 1.頸椎捻挫の自賠責保険の後遺障害14級9号の認定の目安。

 (1)14級認定チェック項目

 ①治療期間が6か月以上

   ②治療実日数が80日程度又はそれ以上

   ③初診時から症状固定まで,訴えの症状が一貫している。

    例えば:初診の症状「頚部痛」が初診の診断書に症状として書かれて

いて→後遺障害の診断書の症状も「頚部痛」が記載されている。

 腰痛の場合も同じです。

   ④訴えの症状が「常時痛」であること。

    ・「天気が悪いと頚部が痛い」,「頚部を後屈すると痛い」等の訴えは常

時痛ではないと判断されるので非該当になる。

 「・・・・すると頸部が痛い」は常時痛でなと判断されるので,「頸

部痛」とだけ書けばよい。

・腰椎捻挫の場合も腰痛が常時痛である必要がある。

   ⑤頸椎のレントゲン写真・MRIで,頸椎に骨棘形成,椎間板狭小化,

椎間板ヘルニア,頸椎すべり症,後縦靭帯骨化等の変性変化(加齢変化)

が中等度から高度に認められること。

    ※頸椎のレントゲン写真,MRIで頸椎に異常所見が認められないか

変性変化が少ない場合は非該当になりますが,治療期間が1年以上に

なる場合は,努力賞として14級が認めることがあります。

※腰椎では腰椎の骨棘形成が著しい,腰椎ヘルニアがある,腰椎椎間

板の後方への膨隆が著しいなどです。

   ⑥被害車両の修理費が軽微でないこと(少なくとも20万円以上)。

   ⑦事故日から初診日までが3日以内であること。

   ⑧治療期間中に1カ月以上の治療中断が無いこと。

    以上8項目全てに該当すればほぼ間違いなく14級認定となります。

    異議申立てても非該当が変わらない致命的な項目は,③痛みの訴えが

   一貫していない。④常時痛でない。⑤Ⅹ-P・MRIで異常が無い。⑧

治療中断が1カ月以上ある。以上のどれかの項目に1つでも該当する場

合です。但し,⑤については1年以上治療した場合に14級認められる

ことがあります。

 

 (2)1213号「局部に著しい神経症状を残すもの」は,上肢にシビレが

あり,そのシビレの部分・範囲と,頸椎のMRIで頚神経圧迫部位(神

経根)の神経支配領域が一致する必要があります。つまり,訴えの症状

が医学的に証明された場合です。

自賠責調査事務所が1213号を認定するのは頸椎捻挫後遺障害総件

数の5%~2%程度なのが実態です。

 

 

 

 

「頸椎損傷のメカニズムの説明」

 

1.首に加わる外力について。

  自動車で衝突したときに首に加わる外力は,首に加わる衝撃力を考える場合,次の.

つが重要な因子となる。

 

①衝突時の車の進行方向

②衝突時のスピード

③搭乗者の衝突時の姿勢

④衝突が搭乗者の意識下に生じたものか,無意識下に生じたものであるか。

 

すなわち,遅いスピードで衝突しても不意の事故であれば首の筋肉を収縮させて頸椎を防御することはできない。また,追突事故であっても搭乗者が振り向いたときに発生したものであれば,通常の追突とは違った方向で首に衝撃がおよぶことになる。

 

2.首の可動域を超える4つの運動

  衝突時の衝撃力によって首が受ける損傷の程度をより詳しく把握するため

には,外力によって首がどのような方向へ強制的に動かされたかを知る必要

がある。

  正常の頸椎が動く範囲(可動域という)を超える場合,次の4つの運動が生

じる。

  ①過屈曲(首を前に倒す運動)

  ②過伸展(首を後ろに倒す運動)

  ③過側屈(首を横に倒す運動)

  ④過旋回(首を右か左に捻るような運動)

 

3.首への衝撃力を推定する際にもう一つ重要な因子は,上記の過屈曲・過伸展・

過側屈・過回旋の強制的な動きが,どの程度のスピードで生じたかということ

である。 

                                   

 

 

「むち打ち症(頸椎捻挫)の慢性化の説明」

 

1.症状の変化(頸椎捻挫,神経根症型,バレー・ルー症状群の場合)

(1)急性期の初期  ・頸部の痛み,はれぼったさ,熱っぽい感じ,運動痛,

   (1~2週)   運動制限,頭痛と頭重感

           ・自律神経症(めまい,眼のかすみ,耳鳴りなど)

           ・腕のしびれ

           ・神経根症状の存在   

 

(2)急性期の後期  ・痛みの部位の原曲化

   (3~4週)  ・痛みの運動方向の限局化

           ・自立神経症状の明確化

           ・神経根症状の明確化

 

(3)亜急性期    ・頸部の運動性の回復

   (3か月まで) ・運動痛の軽減

           ・自律神経,体性神経刺激症状の軽減   

 

 ◎むち打ち症の80%は亜急性期の3か月までに治癒します。

 

2.慢性化の要因(3か月を超えて治療が続く場合を慢性期と言います)

 (1)医学的な原因

   ①受傷時に患者が有していた基礎質感(頸椎症,頸椎椎間板ヘルニア,脊

柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症など)

   ②病態によるもの

    ・神経根症型,バレー・ルー昇降群は頸椎捻挫型に比べて一般に慢性化

しやすい

   ③治療開始の遅れ

    ・早期治療が理想的

   ④不適切な治療

    ・急性期の牽引や乱暴なマッサージ

   ⑤精神・心理的問題

    ・不安感,被害者意識が自律神経失調に関与する

 (2)社会的要因

    ①賠償問題が慢性化に関与しているケースがある

    ②詐病

     他覚的所見の乏しい患者の中には詐病患者もいる可能性がある。

 

 

「頸椎・腰椎の椎間板疾患の説明」

 

椎間板ヘルニアと変形性脊椎症は,椎間板の退行変性を基礎として生じる代表的な疾患であり,次の二つの過程があります。

 

(1)椎間板の中にある髄核の水分は若年者85%であるが,加齢により減少し弾性は低下,形は扁平化し全体的に突出してくる。МRI・T2強調画像では,水分の減少に伴い髄核の信号強度が低下してくる。

(2)椎間板の中の繊維輪の軟化および断裂が生じ,線維輪の厚さは薄くなり,髄核の侵入を許す。

 

イ 変形性脊椎症

  椎体辺縁の骨性増殖(骨棘)が生じるもので,椎体の前方あるいは後方でも

小さいものは無症状が多い。

  МRI,CTよりもX-Pの方が良くわかる。

  骨棘が椎間孔の方向に生じている場合は,神経根を刺激することがある。

  骨棘形成と椎間板膨隆,椎間板ヘルニアが併出することがある。

 

ロ 椎間板膨隆

  繊維輪は前方より後方が薄くなっており,変形して突出する状態をいう。

  脊髄は圧迫していないが,神経根を圧迫する場合もある。

 

ハ 椎間板ヘルニア

  薄くなった線維倭が,外傷その他の外力の影響によって断裂し,そこから髄

核が脱出してそれによって脊髄あるいは神経根を圧迫する状態をいう。

 

 

 

        「頸椎捻挫の保存的治療の説明」

 

頸椎捻挫の治療を急性期(1か月まで),亜急性期(1~3か月),慢性期(3か月超)に分けて治療の説明をします。

 

1.急性期の初期(2週間まで)・・・初期

  ①ポイント

   ・局所の安静が基本

   ・集中的に治療する(この時期の治療が経過を左右する)

  ②治療の目的

   ・浮腫・出血の阻止及び浮腫の軽減

   ・損傷の二次的増大の防止

   ・損傷組織の修復への方向づけ

  ③治療

   ・安静…2~3日

   ・冷湿布

   ・薬物療法

    ・消炎鎮痛剤,酵素製剤(浮腫抑制),筋弛緩剤

 

2.急性期の後期(~1か月)・・・・初期

  ①ポイント

   ・組織の修復を手助けする

  ②治療の目的

   ・血流を促進

   ・筋の緊張の緩和

   ・瘢痕組織から正常組織榎準備

  ③治療

   ・温熱療法

   ・牽引両方

   ・温湿布

   ・圧痛点のブロック注射

   ・マッサージ療法

   ・軽い運動療法

   ・薬物療法

    急性期初期とほぼ同じ

 

3.亜急性期(1~3か月)・・・・中期

  ①ポイント

   ・治療からの離脱を図り通常の社会生活への復帰を促進する

  ②治療の目的

   ・血流を促進

   ・筋の緊張緩和

   ・筋力の回復

   ・社会復帰の促進

   ・バレー・ルー症候群との鑑別

  ③治療

   ・温熱療法

   ・牽引療法

   ・ブロック療法・・局注

   ・神経ブロック

      大後頭神経ブロック

      神経根ブロック

      星状神経節ブロック(バレー・ルー症候群との鑑別)

   ・運動・体操療法

   ・薬物療法・・・基本的には薬物からの離脱を進める。

 

4.慢性期(3か月超)

  ①ポイント

   ・慢性化の要因を確認し,病態に沿った治療を行う

   ・多方面の協力のもとに治療を進める

  ②治療の目的

   ・亜急性期の目的を継続

   ・心理的加重のへの対策

   ・社会復帰促進

   ・他疾患との鑑別

  ③治療

   ・全身的調整.

     筋力増強,持久力増強訓練,集中力訓練

   ・心理分析,心理療法

     心因性要因に対する専門治療

   ・社会的問題点の調整 

     補償,職場復帰,家庭生活

   ・ブロック療法

     硬膜外ブロックを加える

   ・薬物療法

     鎮痛剤,筋弛緩剤,ビタミンB剤などに心因性の症状があれば,抗う

つ剤,鎮静剤を加える

   ・椎間板損傷,退行変性等の鑑別検査

 

 

 

                                

「頸椎捻挫・腰椎捻挫の理学(物理)療法の説明」

 

  頸椎捻挫,腰椎捻挫,関節の捻挫の治療として行われています。

 

 (理学療法の目的)

  鎮痛,筋肉攣縮や血流循環の改善,回復過程の援助

  疼痛の悪循環を断つことです。

   疼痛⇒筋緊張⇒筋の血液循環低下⇒疼痛の増強という悪循環 

              👇

   疼痛緩和⇒筋緊張緩和⇒血流増加⇒疼痛緩和

 

 (理学療法の治療時期)

   亜急性期以降に実施(急性期は禁忌)

 

A 温熱療法

  目的:疼痛,筋攣縮,筋阻血の改善

  方法:方法によって組織への到達深度が異なる。

 

 

 

 

 

      (温熱療法と温熱の到達深度)

 

  治療法           温められる組織        深さ

 ホット・パック        皮膚,皮下組織        表層

 パラフィン浴         皮膚,皮下組織         ↓

 超音波マイクロウエーブ    深部皮下組織          ↓

 マイクロウエーブ       選択的な筋の加温        ↓

 超音波            腱,筋,神経,関節

                靭帯,筋膜           深部

 

B 低周波療法

  低周波の持つ鎮静,鎮痛,鎮痙,消炎作用を応用。

 

 

 

 

 

 

Ⅲ            「四肢の骨折」の説明

 

Ⅰ 上肢の損傷(手指,手関節,橈骨,尺骨,上腕骨,肩関節,鎖骨)

 1.鎖骨骨折

 (1)鎖骨は大変折れやすい骨である。

   鎖骨骨折は通常8字包帯や鎖骨バンドで固定して骨癒合をはかる。

   骨折部の転位が高度で整復不能な場合,第3骨片がある場合,肩鎖関節

脱臼を伴う場合は観血的手術をしてプレートで固定し骨癒合をはかる。

(2)後遺障害

   鎖骨骨折は変形癒合する場合が多く見られます。

   裸体となったとき,変形が明らかにわかる場合は,「鎖骨に著しい変形

を残すもの」として12級5号認定となります。 

 

 2.上腕骨骨折

 (1)上腕骨近位端骨折

上腕骨の骨頭部の骨折です。骨折後の骨癒合は良好な部位です。

治療は徒手整復後に懸垂ギプス包帯をして固定する。

 (2)上腕骨骨幹部骨折

    上腕骨の中央部の骨折であり,骨折部が転位する場合が多く,合併損

   傷として橈骨神経麻痺が発生することが多い。前腕骨の橈骨側や親指・

示指のシビレが発生する。

  ギプス固定等の保存療法が不可能なときや橈骨神経麻痺を伴う時は手

 術療法を行う。

  この骨折は比較的に偽関節なりやすい。

 (3)上腕骨遠位端骨折(上腕骨下端部骨折)

    上腕骨の肘関節に近い部分の骨折です。

    治療法の良否によって,上腕骨遠位端骨折の変形癒合,フォルクマン

   拘縮(前腕諸筋が全く使用にたえないものとなる。),橈骨神経・正中神

経損傷とうの合併症が出ることがあるので注意をようする。

 

 3.前腕骨骨折

 (1)モンテアジア骨折

    橈骨関節の脱臼と尺骨骨折を合併するのが特徴である。

 (2)前腕骨骨幹部骨折

    この部位の骨折は,整復と固定保持が難しく,偽関節をつくりやすい。

     開放骨折の場合は,初めから創外固定が行われる。

 (3)橈骨遠位端骨折

    ①コーレス骨折

     橈骨遠位端の斜骨折であり,非常に多い骨折である。

    ②スミス骨折

   橈骨遠位端の甲側から斜めに骨折線が入る骨折である。

  いずれもギプス固定をするが,高齢者の場合は創外固定をする。

 

Ⅱ 下肢骨折

1.大腿骨骨折

 (1)大腿骨頸部骨折

   この骨折は,①骨頭書骨折,②中間部骨折,③転子間骨折,④転子貫通

骨折の4つに分けられます。

   ①と②は関節包内の骨折であり,内側骨折という。③と④は関節包外骨

折であり,外側骨折という。

 内側骨折は難治性で,後遺障害を残しやすい。例えば高齢者であれば,

沈下性肺炎,老人性痴呆など,一般的には偽関節,骨頭の無腐性壊死,変

形性股関節症をおこしやすく,股関節の機能障害を残します。

   治療としては,これらの合併症を防ぐため,ネイルプレート,エンダ―

釘,コンプレッション・ヒップ・スクリュー,キルシュナ―鋼線などの内

固定材料で手術療法を行います。高齢者の場合は人口骨頭置換術を積極的

に行っています。

(2)大腿骨骨幹部骨折

  大腿部の筋肉により転位を起こしやすいので,治療は手術療法を行います。

  キュンチャ―髄内釘が主な方法です。

(3)膝蓋骨骨折

  膝蓋骨の骨折の治療は,原則として手術的に行う。鋼線締結法が行われる

ことが多い。

(4)脛骨骨折

  転位の小さいものは徒手整復してギプス固定する。

  転位が大きいものや2カ所で骨折を生じた場合は,脛骨にキュンチャ―髄

内釘などの内固定材を用いて手術を行う。

(5)腓骨骨折

  腓骨だけの骨折の場合は,徒手整復してギプス固定する。骨癒合しなくて

も足の機能には問題を残さないので偽関節のままにしておく。

(6)足関節の骨折

   骨折には,①内転骨折,②外転骨折,③垂直圧迫骨折に大別できますが,

いずれの形も脱臼骨折であり,亜脱臼が残らないように正しく整復しなけ

れば,やがては変形性足関節症となる。

  転位がほとんどなく,脱臼が軽度の場合はギプス固定を行うが,転位が

あり,ギプス固定では固定性が不十分なものなどは手術術療法を行う。

                               

 

Ⅲ 上肢の機能障害

  上肢の3大関節(肩関節,ひじ関節,手関節をいいます。)機能障害は以下

の3つに分けられています。

 

  ①「関節の用を廃したもの」とは,関節が完全強直または完全硬直に近い

状態となったものです。完全強直したものとは,関節の可動域が全くない

ものをいい,完全硬直に近い状態となったもとは,健側の関節可動域の1

0%程度以下に制限されているものをいいます。

  ②「関節の著しい機能障害を残すもの」とは,患側の関節可動領域が健側

の1/2以下に制限されたものをいいます。

  ③「関節に機能障害を残すもの」とは,患側の関節可動領域が健側の3/

4以下に制限されたものをいいます。

可動域は原則他動値で測定し健側と比較します。神経・靭帯・腱が損傷

されている場合には自動値で測定します。

 

1.肩関節の機能障害の評価方法

  主要運動の可動域が1/2または3/4をわずかに上回る場合,その関節

の参考運動が1/2以下または3/4以下に制限されていれば,著しい機能

障害または単なる機能障害を認定することが出来ます。

 この場合の「わずかに」とは,原則は5度ですが,肩関節・手関節の著し

い機能障害に当たるか否かを判断するときは10度となります。

 主要運動が複数ある場合は,主要運動のいずれか一方の可動域が該当すれ

ば認定されます。

 

(1)肩関節の主要運動

  ①屈曲(前方挙上)・・・参考可動域角度180°

  ②外転(側方挙上)・内転・・・参考可動域角度180°

(2)肩関節の参考運動

  ①伸展・・・参考可動域角度50°

  ②外旋・内旋・・・参考可動域角度140°

 

2.ひじ関節

  ひじ関節には参考可動域はありません。

(1)ひじ関節の主要運動

  ①屈曲・伸展・・・参考可動域角度150° 

 

3.手関節

(1)手関節の主要運動

  ①屈曲・伸展・・・参考可動域角度160° 

(2)手関節の参考運動

  ①橈屈・尺屈・・・参考可動域角度80°

 

Ⅳ 下肢の機能障害

  下肢は,股関節,ひざ関節,足関節が3大関節です。

 

1.股関節

(1)股関節の主要運動

  ①屈曲・伸展・・・参考可動域角度140°

  ②外転・内転・・・参考可動域角度65°

(2)股関節の参考運動

  ①外旋・内旋・・・参考可動域角度90°

 

2.ひざ関節

(1)ひざ関節の主要運動

  ①屈曲・伸展・・・参考可動域角度130°

 

3.足関節

(1)足関節の主要運動

  ①屈曲(低屈)・伸展(背屈)・・・参考可動域角度65° 

 

Ⅴ 機能障害の事例

  事例により機能障害の理解の参考にして下さい。

 

1.上肢の機能障害

(1)肩関節の機能障害の例

   左上腕骨の骨頭の脱臼骨折にたいして観血的手術をしたが,骨頭の変形

  癒合により,肩関節の可動域制限として外転が健側と比較して1/2以下

に制限されると共に,運動時痛が残った。屈曲は1/2以下にはならなか

った。

 左肩関節後遺障害は10級10号「左肩関節に著しい機能障害を残すも

の」に該当し,左肩関節の運動痛は原因が同じであるため10級に含めま

す。

 

2.下肢の機能障害

(1)右膝関節の機能障害の例

    ①右脛骨上端部骨折(脛骨高原骨折)後に骨折部が不正癒合したため、

 右膝関節面の不正が発生し、リハビリを6カ月したが右膝関節(患則)

の運動可動域が、左膝関節(健側)の運動可動域と比較して4分の3

以下に制限された。同時に右膝の歩行時痛が残った。

本件の場合、「右膝関節の機能に障害を残すもの」として12級7号

該当となります。

※1)右膝関節の機能障害12級7号を認めた場合は、右膝の歩行

時痛は別途に認められずに右膝関節の機能障害12級7号に含

まれます。(理由は、両方の原因が右脛骨上端部骨折後の不正癒

合に原因するからです。

但し、右膝関節の機能障害が4分の3以下に制限されたてな

く非該当となった場合は、右膝の歩行時痛を採用して右膝に「局

部に頑固な神経症状残すもの」として12級13号該当となり

ます。理由は右膝痛の原因が右脛骨上端部骨折後の不正癒合に

因るものであり医学的に証明できる右膝痛であることから12

級になります。

※2)注意点は後遺障害診断書に記載されている運動領域が測定規

準通りに測定されていない場合が散見されることです。そのた

め後遺障害診断書の主要運動領域の他動値、自動値を点検する

必要があります。

1度の違いで非該当になったり12級認定になったりするこ

とがあります。

正しい測定は「日本整形外科学会及び日本リハビリテーショ

ン医学会」により決定されています。具体的には「関節可動域

の測定要領」に基づき測定します。(労災補償 障害認定必携)

にわかりやすく絵図で書かれています。

     ※3)本件の場合、膝関節の主要運動は伸展と屈曲です。

        骨折が可動域制限の原因から他動値を採用します。

        右膝関節(患測)伸展0度、屈曲90度、左膝関節(健測)

伸展0度、屈曲130度の場合

130度×3/4=97.5度 > 90度 より右膝関節

は3/4以下に制限されていることから、12級7号該当と

なります。

     ※4)基本的には他動値を採用して評価します。靱帯損傷や神経損

傷のある場合は自動値を採用して評価します。

 

 

 

 

「四肢の四大関節の可動域制限の原因の説明」

 

 交通事故により,上腕骨外科頸骨折後の肩関節の可動域制限,橈骨遠位端骨折後の手関節

の可動域制限,脛骨近位端骨折後の膝関節の可動域制限などがありますが,可動域制限の原因について説明します。

 

1.関節内骨折で,骨折した骨が転位したまま骨癒合した場合

  転位した状態で骨癒合しているため関節の可動が制限されて可動域制限を

起こす。

  例:橈骨骨折で転位して骨癒合した場合に,手関節の可動域制限が残る。

 

2.関節内骨折で,骨折した骨が不正癒合した場合

  骨の不正癒合のため関節を動かすときに滑らかに動かなくなり可動域制限が発生する。併せて可動時の関節痛も発生する。

  例:脛骨高原骨折が不正癒合した場合

 

3.関節内の靭帯の断裂や損傷があった場合に関節の可動域制限が残る。

  例:脛骨外側顆骨折に併合して前十字靭帯・後十字靭帯の断裂又は損傷があった場合

  例:上腕骨骨頭骨折に伴って腱板断裂を合併した場合

 

4.骨折に伴って神経を損傷した場合に可動域制限が発生する。

  例:腓骨骨頭骨折で腓骨神経を損傷した場合に,腓骨神経麻痺による足関節の可動域制限が発生します。

 

5.骨折によりギプスで関節を固定した場合に関節に拘縮を起こし可動域制限が発生する。

  拘縮

  「関節周囲の組織が何らかの原因によって被伸縮性を失うことによって,その関節が一定の位置に固定したままの状態に陥り,他動的に動かすことができなくなった状態を指す。

  皮膚,筋,筋膜,腱などの変化によって起こる。

  いかなる原因にせよ,ある位置に長時日固定されると,関節周囲組織には次第に線維化が進み,拘縮は非可逆的な状態に陥るので注意が必要である。」

 例:脛骨遠位端骨折により足関節を含めてギブス固定した場合,ギブス除

去後に足関節が拘縮して足関節の可動域制限が発生する。

 

 

 

 

 

「半月板損傷・膝関節靭帯損傷の説明」

 

1.半月板損傷の治療

  半月板には,辺縁3分の1の部位を除いて血管分布がない。

  したがつて辺縁部剥離や辺縁3分の1の部位の縦断裂の症例では,保存療

法または半月板縫合術によって,半月板を切除せずに治す可能性が残る。

 辺縁部以外の3分の2の部位に断裂があれば半月板切除術が適応となる。

 断裂した半月板を放置すると,疼痛,機能障害が持続するだけでなく,関節

軟骨を傷つけ,関節症変化が進行する。

 

2.膝関節靭帯損傷の治療

  不安定性のないものは保存療法でよい。

  受傷直後には関節内出血の防止や,損傷部の安静を保持するために1~2

週間程度ギプスやシーネを用いて関節を固定する。 

 その後はサポーターや靭帯損傷用装具を用いて,損傷部にストレスがかか

らないように工夫しながら,出来るだけ早期から筋力維持訓練や関節可動域訓練を開始する。

 損傷した靭帯が癒合するのには約3週間,その強度を回復するにはさらに

3週間,計6週間ぐらいは必要である。

 大腿四頭筋の訓練は,保存治療や手術治療の別なく,受傷翌日から開始し,

努めて筋力低下を防止しなければならない。

 手術的治療方法は,靭帯断裂があり著しい不安定性のあるものについて靭

帯修復術あるいは靭帯債権を行う。

 手術的治療法では,長期間の固定による膝関節の拘縮を防ぐため,装具を装

着して比較的早期より他動運動を始める傾向にある。

 複合靭帯損傷の治療では,約4~6か月間のリハビリテーションを必要と

することもある。

 

 

 

 

「四肢の3大関節の脱臼と靭帯損傷の説明」

 

【 脱臼 】

 1.肩関節の脱臼

   外傷性の脱臼の中で,最も多い。ほとんどが前方脱臼である。

   骨折や神経,血管損傷を合併することが多い。

   予後は,一般的に良好であるが,反復性脱臼に移行しやすい。

 

  (治療)

   麻酔下に徒手整復術をする。

   3週間程度の固定後,自動運動を開始する。

 

 2.肘関節脱臼

   肩関節脱臼に次いで多く,後方脱臼が大部分である。

 

  (治療)

   一般的に徒手整復は容易である。

   徒手整復して,1~2週間の固定後,軽い自動運動に移る。

   不安定性の強い時には,靭帯の修復が必要。

 

 3.股関節脱臼

   肩関節に比べ,頻度は低い。

  ①後方脱臼

   股関節脱臼の大部分を占める。

   走行中の自動車に座っていて正面衝突した際,膝がダッシュボードに強

く打ちつけられたような場合に起こる。

 

 (治療)

  できるだけ早く全身麻酔下に徒手整復をする。

  整復後2週間ぐらいから軽い自動運動を始める。

  長期間(6週間程度),患肢の荷重を制限する。

  脱臼骨折では手術が必要。

 (合併症)

  坐骨神経損傷,

大腿骨骨頭壊死(12時間以内に整復しなければ高率に発生する)

 

 

                           

 

 

 

       「肩関節の腱板損傷についての説明」

 

交通事故で肩関節の捻挫・打撲・脱臼・上腕骨骨頭の骨折などで腱板が損傷(腱板断裂・部分断裂)した場合に,肩関節の可動域制限が発生することがあります。

 

1.腱板の作用

  ①上腕骨の骨頭を引きつける

  ②上腕挙上

  ③骨頭引き下げ

  ④上腕内旋

  ⑤上腕外旋

 

2.腱板

  上腕骨頭をとりまいている小さな筋肉群のことです。

  上腕骨頭と肩峰の間に挟まれています。

  ・小結節に付着している・・・・・肩甲下筋

  ・大結節に付着している・・・・・棘上筋,棘下筋,小円筋 

 

3.損傷(完全断裂・部分断裂など) 

  腱板の退行変性(加齢・老化による変性など)を基盤として起こるものが圧

倒的に多い。

  しかし,小さな外力によって断裂を起こすこともまれではない。

  ・疼痛は受傷時に短い激痛の時間があり,それから軽くなるが,6~10時

間後再び起こる。

  ・上肢の挙上・・・自動不能(他動では正常)

  ・確定診断は

   ・関節造影

   ・CT

   ・関節鏡

   ・血管造影

                                  

 

 

 

 

 

「膝関節内障の説明」

 

 関節の支持組織が変化を起こし,膝関節の機能に支障が生じる場合を総称して膝関節内障という。

 

1.膝関節の構造

  膝関節は大腿骨顆部,膝蓋骨,脛骨顆部との間に形成され,関節包,靭帯が

これを結合する。さらに脛骨顆軟骨面には内・外側に半月板がのっている。

 

  ・半月板・・・大腿脛骨関節の安定性を高め,関節面に加わる衝撃力を分散,

吸収する機能を持っている。

 

  ・十字靭帯は,関節を内部で前後にクロスするごとく大腿骨と脛骨を結んで

いる。

    ・前十字靭帯・・・・脛骨の前方へのすべりを防ぐ。

    ・後十字靭帯・・・・脛骨の後方へのすべりを防ぐ。

 

  ・内側側副靭帯・・・・・関節内の安定を保つ。すなわち,外反を防ぐ。

 

  ・外側側副靭帯・・・・・関節外側の安定を保つ。すなわち,内反を防ぐ。

 

2.膝関節の損傷。

  ア 検査亜検査法  徒手検査(不安定性のテスト・圧痛など),X線検査,関節造影,МRI,関節鏡など

  イ 半月板損傷

    ①症状

     ・半月板に損傷が起こると,関節面に不適合を生じたり,損傷部が関

節面の間に入り込んで症状を惹き起こす。

     ・急に,関節の内側あるいは外側に疼痛が起こり,完全伸展不能とな

る。

     ・関節は,出血,浸出液のため腫脹する。

 

    ②治療・・・・・保存的治療

    ・半月板切除(なるべく部分切除)

    ・半月板縫合術

    手術は関節鏡で覗きながら行う(鏡視下手術)。

 

  ウ 十字靭帯損傷

    ①症状 

     ・前十字靭帯では,膝の前方への不安定性・引き出し症状(前方引き

出し症状)

     ・後十字靭帯では,膝の後方への不安定性・押し出し症状(後方引き

出し症状)

 

   ②治療・・・・・・保存的治療(装具)

           ・十字靭帯縫合術・形成術

     後十字靭帯の損傷は,大腿骨に対して脛骨上端が後方に押されたと

きに生じる(自動車事故でダッシュボードにぶつけたときなど) 

 

   エ 側副靭帯損傷

     ・内側が多い

     ①症状

      内外側側副靭帯に断裂が生じた場合は,断裂側の膝関節支持機能

が脱落する結果,膝関節の左右への動揺性を生じる。

 

     ②治療・・・・・・・保存的治療(ギプス固定,装具)

              ・靭帯形成術

      十字靭帯損傷と側副靭帯損傷とが合併した複合靭帯損傷とりやす

い。

                                   

 

 

 

「四肢の末梢神経麻痺の特徴の説明」

 

交通事故の外傷により四肢を骨折した場合に,同時に四肢の神経を損傷した場合に発生する四肢の関節の可動域制限の症状について下記に説明します。

 

 

 

 

 

(上肢)          症状名        症状の内容

 

   橈骨神経麻痺     下垂手     ・手関節可動域・・背屈不能

                      ・母指可動域・・伸展および外転不能

                      ・他の指可動域・・МP関節伸展不能

 

正中神経麻痺     猿手      ・手関節可動域・・屈曲および回内不

                    能

                  ・主に母指可動域・・屈曲不能

 

 尺骨神経麻痺     鷲手あるいは  ・指の細かな運動・・・不能

              カギ手  ・末梢の指骨・・・曲がる

                   ・特に4指・5指・・・曲がる 

 

 

 

(下肢)

 脛骨神経麻痺     カギ足     ・足関節の可動域・・底屈及び内転

不能

                   ・足指関節の可動域・・底屈不能

 

腓骨神経麻痺     下垂足     ・足関節の可動域・・背屈不能

                  ・足指関節可動域・・背屈不能

 

                               

 

「大腿骨頸部骨折の説明」

 

近年高齢化が進み交通事故だけではなく,家庭内,介護施設内で高齢者が転倒したりすることで大腿骨頸部骨折が増えています。

 

(特徴)

 1.高齢者に多い骨折である。

 2.骨粗鬆症があると,さらに起こりやすい。

 3.大腿頸部内側骨折は骨癒合しにくい難治性の骨折であるが,理由としてい

かにの理由である。

①大腿骨頸部は骨膜を欠く。

②血幹分布の関係から骨頭が壊死しやすい。

③力学的に骨折面には圧迫力よりも剪断力が強く作用しやすい。

 

 4.内側骨折,外側骨折共に,多くの症例で手術が行われる。

 5.できるだけ正確な整復,強固な固定を行う。

 6.高齢者の転位のある内側骨折では人工骨頭置換術が行われる。

 7.高齢者の場合は,重篤な合併症(肺炎,老人性痴呆など)を避けるたまに

早期離床を図ることが肝要であり,積極的に手術療法が行われる。

 

(人工骨頭置換術)

  人工骨頭を切除して,人工材料で作った骨頭で置換する手術。

  大腿骨頸部骨折(内側骨折)で偽関節になった場合。

  高齢者の大腿骨頸部骨折で転位の大きい場合。

  大腿骨の無腐性壊死(阻血性の壊死)の場合。

  以上のような場合に置換術が行われる。

 

(人工股関節置換術)

  股関節の関節窩,骨頭とも人工材料で作った関節で置換する手術。

  関節機能の高度な荒廃をきたす疾患を対象として行われる。

 

 ※人工骨頭の耐用年数は15年程度なので,置換手術してから15年程度経過

すると再置換手術が必要となってきます。

                                  

 

 

 

「脊椎の圧迫骨折についての説明」

 

交通事故で腰椎や胸椎に圧迫骨折がしばしば発生します。

 

1.新鮮な圧迫骨折

  新鮮な圧迫骨折は日が経つにつれて骨の圧潰が進行して楔状変形が著しく

なるが,数か月で楔状変形は止まる。

 定期的にX-Pを撮影することにより骨の圧潰の進行が確認できる。

 また,受傷時にМRIを撮影すると骨の中に出血が認められることもある。

 

2.陳旧性の圧迫骨折(事故以前からあった圧迫骨折)

  定期的にX-Pを撮影しても骨の圧潰の進行が見られない。

 

3.脊柱の運動障害(可動域制限)

  圧迫骨折に伴って脊柱の運動障害が発生する。

  ①第5腰椎・第4腰椎に圧迫骨折が発生した場合は,第5・4腰椎は脊柱運

動の支点となる骨なので,著しい脊柱の運動障害(可動域制限)が発生しや

すい。

②それに比べて,上位腰椎(第2・1腰椎)及び胸椎の圧迫骨折は,脊柱運

動の支点とならないため脊柱の運動障害は軽度のものである。

 

 4.骨粗鬆症

   骨粗鬆症があると少しの外力で圧迫骨折を引き起こしやすい。

   骨粗鬆症とは骨組織の組成は正常であるが,単位体積あたりの骨の量が

減少した状態で,一つの症候群と言われている。

 骨梁が減少し,骨皮が薄くなり,骨髄腔が拡大して,X線でも骨は薄く見

える。

 原因はさまざまで,老年性,閉経後のものが最も多いが,特発性,各種内

分泌異常,廃用性骨委縮,外傷後などの急性骨委縮もある。

 骨委縮と骨粗鬆症は,ほとんど同義に使用されるが,ただ骨委縮は局所性

の病態に用いられ,骨粗鬆症は全身性の(主に体幹)病態に用いられる。

                               

 

 

 

「脳挫傷,急性硬膜外血種,急性硬膜下血種,慢性硬膜下血腫,脳内血腫,外傷

性くも膜下出血の説明」

 

1.急性硬膜外血腫

  ①発生・好発部位

   中硬膜動脈の断裂によるものが多い。静脈洞損傷によるものもある。

   頭蓋骨の線状骨折を伴うことが多い。他の血腫との併合もある。

 

  ②症状

   典型的症状では,意識声明期を経て意識障害をきたす。

 

  ③診断

   XP,CT(典型的は凸レンズ状)

 

  ④治療

   血腫除去手術,神経症状のないものは保存的療。

 

  ⑤予後

   早期に発見,治療したものは予後は良好。

 

2.急性硬膜下血腫

  ①発生・好発部位

   架橋静脈,脳表の動静脈の損傷などによる。

   他の血種との合併もある。脳挫傷の合併が多い。

 

  ②症状

   意識障害をみることが多く,受傷後より意識喪失状態であることが多い。

 

  ③診断

   XP,CT(典型的な三日月型)

 

  ④治療

   血腫除去手術または保存的療法

 

  ⑤予後

   死亡率が高く,後遺障害を残すことが多い。

 

3.慢性硬膜下血腫

 ①発生・好発部位

  軽微な外傷後,1~3か月で発生,高齢者,乳幼児に多い。

  大部分は一側性であるが,両側の場合もある。

 

 ②症状

  頭痛,対側の麻痺,痴呆症状など。

 

 ③診断

  X-P,CT,МRI

 

 ④治療

  手術的治療が一般的,局所麻酔下の穿頭術,穿頭血腫除去術,穿頭ドレナー

ジ術

 

 ⑤予後

  ほとんどの場合,予後は良い。

 

4.脳内血腫

 ①発生・好発部位

  脳挫傷などによって生じる場合,深部の血管が断裂して生じる場合,深部脳

組織の挫傷に続発する出血によって生じる場合など。他の血種との合併もあ

る。

 実際は脳挫傷と鑑別しにくいことが多い。

 

②症状

 受傷直後から重篤な意識障害をみるものが多いが,清明期をみるものも多

い。

 

③診断:XP,CT,脳血管撮影

 

④治療

手術または保存的治療

 

⑤予後

 予後は一般的に悪くない。出血部位および合併脳挫傷に程度により後遺症

を残す。

 

5.外傷性クモ膜下出血

 ①発生・好発微意 

  くも膜下腔を走る主要血管とその分枝の損傷による場合や,脳挫傷,硬膜下

血腫,脳室内出血などによる場合がある。

 脳挫傷や他の頭蓋内血腫が合併しているものが多い。

 

②症状

 出血量と臨床症状は高い関係を示す。症状は多様。

 

③診断

 脳動脈瘤破裂との鑑別が必要。

(受傷機転,CT,脳血管撮影による)

 МRI検査

 

④治療

 合併している脳挫傷の治療に準じる。

 

⑤予後

 急性硬膜下血腫,脳挫傷と同様。

 

6.外傷性脳血管閉塞

   内頚動脈,中大脳動脈,椎骨動脈が多い。

   いずれも受傷以後数時間から数日で発生。

 

  ①原因

   血管損傷による血栓形成,血栓の遊離。

 

7.外傷性動脈瘤

 ①好発部位

  重症頭部外傷で発症。偽性動脈瘤(いつたん切れた血管がつながってできる)

が多い。

 

②治療

 破裂しやすく,発見したら早期に手術。

 

 

 

 

 

 

「頭蓋内血腫の発生と予後の説明」

 

   発生 頭蓋骨と硬膜の間に生じ,原因は中硬膜動脈の損傷によるものが

大多数である。

線状骨折に伴って発生することが多い。

意識清明であったのが血腫の増大に伴い,外傷後24時間以内に意識

障害をきたすものが多い。・

急性硬膜外血種

 予後 一般に脳挫傷を合併していることが少なく,早期に発見し治療すれば,多くの場合,後遺障害を残さず治癒する。 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 発生 硬膜下腔(硬膜とくも膜の間)に生じ,原因は脳表の小さな血幹の

負傷による。

外傷直後より意識障害の続くものが多い。

急性硬膜下血腫

 予後 強い脳挫傷を合併していることが多く,死亡率が50~70%と高いうえに,神経脱落症状,外傷性てんかん,植物状態など後遺障害を残すことが多

 発生 高齢者に多く,軽微な外傷後,徐々に硬膜下腔に出血して血腫を作り,

症状は1~3か月後に現れる。

慢性硬膜下血腫

予後 脳挫傷はないので,手術を行い血腫を取り除けば,予後はきわめて良好である。

発生 クモ膜下腔(クモ膜と軟膜の間)に出血を生じ,脳脊髄液に血液が混入している。

外傷性クモ膜下出血

 予後 脳挫傷,急性硬膜下血腫,脳内血種等を合併することが多く,予後は合併症に準じる。

 発生 頭部への衝撃によって脳の内部に出血し血腫を形成したものである。事故後すぐに症状が現れることが多いが,3日から1週間後ぐらいに現れることもある。

脳内血腫

 予後 脳挫傷を合併することが多く,予後は良くない。

 

 

 

 

「高次脳機能障害の説明」

 

頭部外傷により,脳挫傷,外傷性くも膜下出血,急性硬膜下血腫,びまん性軸策損傷など,脳に損傷を受けたことにより,

記憶・記銘障害(日時・場所・人の名前が覚えられない,新しい出来事を覚えられない,同じことを繰り返し質問する),注意障害(簡単なミスが多い,気が散りやすい,ふたつのことを同時に出来ない),失見当識,知能低下,判断力低下,人格変化,易怒性,感情易変,多弁,攻撃性,暴言・暴力,幼稚性,病的嫉妬,被害妄想,意欲低下,てんかん,失調性歩行,痙性型麻痺などの症状が発症することにより,

社会生活または日常生活に制約がある状態が高次脳機能障害です。

 障害が高度な場合は,高度の痴呆があるために,寝たきりや車椅子生活の状態となり,生活維持に必要な身の回りの動作に全面的に介護を要する状態となれば,自賠責保険の後遺障害等級別表第一第1級1号に該当します。

 診断のための検査は,頭部MRI,CT,脳波,知能検査,痴呆度検査,心理テスト,神経学的検査などを行います。

 

 

    「高次脳障害等級認定にあたっての基本的な説明」

 

別表第一1級1号

 (障害認定基準)

 「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」

 (補足的な考え方)

 「身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために,生活維持に必要な身の

回り動作に全面介護を要するもの」

 

別表第一2級1号

 (障害認定基準)

 「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの」

 (補足的な考え方)

 「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって,1人で外出することができず,日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄,食事などの活動はできても,生命維持に必要な身辺動作に,家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」

 

別表第二3級3号

 (障害認定基準)

 「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの」

 (補足的な考え方)

 「自宅周辺を一人で外出できるなど,日常の生活範囲は自宅内に限定されていない。また声掛けや,介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力,新しいことを学習する能力,障害の自己認識,円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって,一般就労が全くできないか,困難なもの」

 

別表第二5級2号

 (障害認定基準)

 「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」

 (補足的な考え方)

 「単純くり返し作業などに限定すれば,一般就労も可能。たたし新しい作業を学習できなかったり,環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており,就労の維持には,職場の理解と援助を欠かすことができないもの」

 

別表第二7級4号

 (障害認定基準)

 「神経系統の機能または精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの」

 (補足的な考え方)

 「一般就労を維持できるが,作業の手順が悪い,約束を忘れる,ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」

 

別表第二9級10号

 (障害認定基準)

 「神経系統の機能または精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」

 (補足的な考え方)

 「一般就労はできるが,問題解決能力などに傷害が残り,作業効率や作業持続力などに問題があるもの」

 

上記等級を決めるにあたっての診断や諸検査については下記の通りである。

 

1.頭部外傷後の意識障害の程度

  JCS又はGCSによる意識レベルの評価

2.レントゲン・CT・МRIなどによる脳損傷の画像診断(経過を追って撮影

する)

3.脳波検査(慢性期に行う)

  ・外傷性てんかんの診断にも有用

4.神経審理学的検査

  ①知的機能に関する検査

   ・WĄIS-R・・・成人用

   ・WISC-Ⅲ・・・児童・生徒用

   ・WPPSI・・・幼児・児童用

   ・長谷川式簡易知能評価スケール

   ・Ⅿini-entaI Stata xamination

    ②記憶と学習機能に関する検査

   ・ウエクスラー記憶検査

   ・三宅式記銘検査

   ・ベントン視覚記銘検査

  ③言語機能に関する検査

   ・WAB失語症検査日本版

   ④前頭葉機能検査

    ・ウインスコンシン・カード分類テスト

   ⑤情報処理能力検査

   ⑥遂行機能検査

 

5.四肢の運動機能検査

 

6.身の回り動作能力の診断

 

7.認知・情緒・行動障害の診断

 

8.「日常生活報告書」患者の家族が記入

 

以上の諸資料によって「高次脳機能障害特定事案」として自賠責保険の審査会で審査して後遺障害等級を認定する。

 

 

 

 

「精神・神経系統の検査の説明」

 

1.単純X-P

  骨の器質的変化を見るには有効ですが,血管,神経,椎間板,関節軟骨等の

南部組織はX線をあまり吸収しないため,コントラストが出ないという欠点

があります。

 

2.CT

  CTは,X線吸収度の差を利用し,コンピュータの計算によって横断面の画

像を構築するものです。

  脳挫傷や頭蓋内血腫等を検査するのに威力を発揮しますが,その一方,アー

チファクト(偽像)が発生しやすいという欠点があります。

 

3.МRI

  体を強力な磁場に置き,一種の電磁波を,目的とする微意にめがけて照射し

ます。その電磁波を受けた体の中にある水素原子核の反応を検出することに

より,体の断面を画像化したものです。

  X線を使わないため被曝がなく,特に南部組織の描写に優れています。また,

横断面だけでなく,矢上面・冠状面などの任意の断層面も画像佳することがで

きます。

 

4.脳波検査(EEG)

  脳波は,脳で生じた自発性の電位をとらえたものです。

  脳に病変があれば,特有の波(異常脳波)を示します。異常脳波は,主に棘

波と徐波に大別されますが,棘波は主としててんかん性の疾患に現れ,徐波は外傷や脳血管障害等の脳の機能低下をきたすような病変に際して現れます。

                             

5.神経心理学検査

  神経心理学的検査には,知能に関する検査,記憶と学習機能に関する検査,

言語機能に関する検査,前頭葉に関する検査があります。

  主な神経心理学的検査は主として下記の通りです

  ①知的機能に関する検査

   ・WAIS・・・・成人用

   ・WISC・・・・児童・生徒用

   ・WPPSI・・・・.幼児・児童用

   ・長谷川式簡易知能評価スケール(HÐS-R)

  ②記憶と学習機能に関する検査

   ・ウクスラー記憶検査(WⅯS-R)

   ・三宅式記銘検査

   ・ベントン視覚記銘検査

  ③言語機能に関する検査

   ・WAB失語症検査日本版

  ④前頭葉機能検査

   ・ウインスコン・カード分類テスト(WCST)

 

 6.深部腱反射の検査

   腱を打腱ハンマーで叩くと,その刺激は求心性線維を通り脊髄にある反

射中枢に達します。反射中枢に達した刺激は,大脳まで昇ることはなく,遠

心性線維を通って筋に戻り,反射的にこれを収縮させます。この一連の経路

を反射弓と言います。

 腱反射は,存在するのが正常ですが,末梢の反射弓内に障害があれば反射

は低下あるいは消失し,逆に反射弓より上位の中枢神経系,つまり脳または

脊髄に障害があれば,反射は更新します。

   腱反射の主なものは

   ・上腕二頭筋反射(BTR)

   ・上腕三頭筋反射(TTR)

   ・膝蓋腱反射(PTR)

   ・アキレス腱反射(ATR)

    などがあります。

 

7.病的反射検査

  病的反射とは,星状の状態であれば認められない反射で,中枢神経の傷害

(椎体路障害)の場合に陽性となる玉,その診断に有用です。

  病的反射には,上肢のホフマン反射やとレーナム反射,下肢のバビンスキー

反射等があります。その他,膝クロームスや足クローヌス等もあります。

 

8.徒手筋力検査(ⅯⅯT)

  神経が障害されたときは,その神経に支配されている筋の筋力が低下しま

す。

  筋力検査は,どの神経がどの部位で,どの程度障害されているのか,ある程

度予測を付けるために行います。

 筋力検査には,徒手筋力判定表が一般的に使われていますが,神経障害だけ

でなく,筋そのものの障害,疼痛,脱力感,心因反応などにより筋力が低下す

るケースも多いため,必ず両側を調べ,また,他の検査結果も考え併せて判断

することが大切です。

 

 

 

           徒手筋力判定表

 

表示法        筋力

5(normal)   100%   強い抵抗を加えてもなお打ち克って動く

4(good)      75%   いくらか抵抗を加えてもなお打ち克って動

               く

3(fair)      50%   抵抗を加えなけらば重力に打ち克って動く

2(poor)      25%   重力を除けば動く

1(trace)     10%   筋の収縮は認められるが関節は動かない

0(zero)       0%   筋の収縮も全く見られない

 

9.握力検査 

  握力は,手指の筋力を総合的にみたものです。

筋力の低下は,神経麻痺によるものの他に,筋肉や関節が痛くて力が入らな

い場合や,手がだるくて力が入りにくいと言った場合にも起こり得るので,参

考程度にとどめます。

 また,握力は,性別,職業,年齢など,いろいろな条件によって個人差があ

るので,必ず両側を測ります。

 

10.筋委縮検査

  筋委縮とは,骨格筋が量的に減少することで,麻痺が長く続いた結果などに

起こります。

  筋委縮の検査は,左右の筋肉の状態を視診,触診あるいは周径を測って調べ

ます。

11.知覚検査

   神経の障害部位と知覚異常の領域には密接な関係があります。

したがって,知覚障害の分布を調べることによって,神経の障害部位を探

り出すのが知覚検査の目的となります。

この知覚検査は,いろいろな器具を使って,触覚,痛覚,温度覚,位置覚,

振動覚、二点識別寛などをしらべます。

 

12.筋電図検査・神経伝導速度検査

   筋電図検査は,筋の収縮に伴って発生する電位を測定・記録する検査法で

す。末梢の運動系疾患の診断に利用されます。

 また,神経伝導速度検査は,同一神経の2点に電気刺激を加え,その反応

電位の波形の時間的ズレから,その間の神経伝導速度を測定する検査法で

す。

神経に異常があれば,伝導速度の遅延が起こります。

 

13.スパーリングテスト

   スパーリングテストの目的は,頸部の神経根障害を調べることです。

   頭を斜め後方へ押し付けること,椎間孔つまり神経根の出口が狭められ

るため,ここを通る神経根に障害がある場合は,その神経根の支配領域に放

散痛やシビレ感が生じ,患者はいつもの症状の再現あるいは増強を訴えま

す。

痛みやシビレ感の生じた部位によって,何番目の神経根に障害があるの

かをある程度予測できます。

 

14.ジャクソンテスト

   ジャクソンテストも,神経根障害の有無を調べる検査です。

   検査方法は頭を後屈させ,押し付けて調べます。

   また,ジャクソンテストは,ショルダーデプレッションテストをさす場合

もあります。

これは頭を反対側に倒し,肩を下に押し下げて,放散痛の有無やその領域

  を調べて,やはり神経根部の障害(癒着)を調べるものです。

 

15.SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)

   SLRテストは,腰部の神経根障害の有無を調べる検査です。

   検査方法は,仰臥位にさせ,膝関節伸展位で踵部を持ち上げることにより,

腰部神経根を伸張させ下肢痛を誘発させて調べます。

 

16.皮膚温度検査

  末梢神経の障害では,その障害が抹消の血流に影響を与え,皮膚温度の低下

などをきたす場合がます。

  このような場合に,皮膚音の状態を調べる方法として,サーモグラフィーな

どがあります。

 

17.平衡機能検査

   身体の平衡は

   ・前庭系

   ・視覚系

   ・表在・深部知覚系

   ・小脳その他の中枢神経が調整

   以上のどこかに障害があると,めまい,平衡障害が発生します。

   平衡機能検査は大別すると,身体・四肢に現れる異常を検出するための検

査と,眼球運動に現れる異常を検出する検査に分けられます。

 身体・四肢の検査には

体位が自動的あるいは他動的に変化した場合,頭部や体幹を正常位置に戻

す働きをみる立直り検査と,全身の全身の骨格筋緊張の左右非対称の表現型

である偏竒検査があります。

立直り検査には,ロンベルグ検査,マン検査,斜面検査などがあり。

偏竒検査には,指示検査,遮眼書字検査などがあります。

 眼球運動の検査には,

 フレンッエル眼鏡を使用する頭位眼振検査

 温度刺激を加える温度眼振検査

 視覚刺激による視運動眼振パターン(OKP)検査などがあります。

 

 

 

 

                                   

「CTとМRIについての説明」

 

1.CT

  血腫(出血),脳挫傷,脳浮腫の診断,骨折の診断に用いる。

  ・高吸収域・・・X線吸収率の高いものは白く写る(骨,血腫,脳挫傷急性

期)

  ・低吸収域・・・X線吸収率の低いものは黒く写る(空気,脳脊髄液,脳浮

腫,脳挫傷慢性期)

 

2.МRI

  血腫(出血),脳挫傷,脳浮腫の診断に用いる。

  CTでは画像化しにくい脳幹部,脊髄や椎間板の画像化が可能である。

   T1強調画像・・・水が暗く見える

   T2強調画像・・・水が白く見える

 

          「CTとМRIの比較」

 

            CT              МRI

 

撮影時間       短い(約1分)        やや長い(約15分)

 

出血         急性期よりわかる       急性期はわかりにくい

                          出血時期の推定加納

 

脳挫傷        わかりにくいことがある     より分かりやすい

 

脳浮腫        わかりにくいことがある     より分かりやすい

 

X線被曝          あり              なし

 

補助装置         搬入加納             搬入困難  

 

主な用途       受傷直後(急性期)の診断    受傷後(慢性期)の経過観察

 

                                      

「高次脳機能障害損害賠償請求事例(別表一の第11号)」

 

Ⅿ海上火災保険㈱ 御中

 

弁護士法人はるか

 

B氏の損害賠償額について,以下のとおり請求いたします。

第1 傷害分

1 治療費(10,470,186円

治療期間 257日(H28.10.9H2.6.22),うち入院日数 257日

合計                   10,470,186円

 

 

2 看護料及び紹介手数料(1,339,042円)

甲看護婦家政婦紹介所の家政婦が付添看護した。

看護期間  113日(H28.2.13H2.2.22H2.3.11H2.6.22

看護料   1,194,975円(日額10,575円×113日)

紹介手数料   144,067円

合計    1,339,042円

 

3 入院雑費(385,500円)

赤い本 日額1,500円×257日=385,500円

 

4 交通費(320,240円)

①長男Y  183,600円

②二男X   66,420円

③長女T   70,220円

合計    320,240円

 

5 入院付添費(929,500円)

付添期間 143日

赤い本 日額6,500円×143日=929,500円

※ 入院付添費について

被害者は,一時は生死も危ぶまれる状態で何とか一命を取り留めた後も,せん妄が発症してベッドで暴れたり,その他,妄想,幻視などにより「○○に会いだから今から○○宅に行く」,「○○さんにお金を貸しているので取りに行く」等と言って突然ベッドから降りようとするためベッドから転倒する危険があり,病室には家政婦しかいないのに「○○が部屋のあそこにいる」と言ったり,病室のガラス窓を見て「○○が映っている」と言ったりなどの状態が入院期間中続き,家政婦の付添看護だけでは精神状態が安定しなかったため,長男夫婦,二男夫婦,長女が交代で上記の期間付添看護をし,被害者への話し掛けや被害者の話すことを根気よく聞くなど被害者を受容して愛情を持って接したことで少しずつ精神的に安定してきたことから,平成28年3月11日には家政婦1人だけでも付添看護がどうにか出来る状態となった。

 

6 休業損害(2,543,529円)

3,612,500円÷365日×257日=2,697,986円

※ 休業損害について

被害者は,本件事故以前,株式会社Gの監査役に就いており,年間6,000,000円の役員報酬を得ていた。

被害者の役員報酬は,労働提供の対価としての実質をすべて有するものではないが,監査業務や株主総会・役員会への出席など実際に稼働していることから,監査役の職務を果たしていたと認められるため,賃金センサス平成28年第1巻第1表男子学歴計70歳の平均年収である3,612,500円を基礎収入として休業損害を認めるのが妥当である。

したがって,2,543,529円(3,612,500円÷365日×257日)を休業損害とすべきである。

尚,本件事故後は監査役の職務が遂行できないので退任となった。

 

7 傷害慰謝料(3,787,766円

赤い本の基準額 2,913,666円

    内訳) 入院8か月分 2,840,000円

        入院17日分    73,666円

        計      2,913,666円

増額  30%

合計  3,787,766円(2,913,666円×1.30)

※ 基準額について

入院日数257日を,8か月と17日の入院として計算した。17日分については,9か月の基準額297万円と8か月の基準額284万円の差額である13万円を30日で除した日額に17日を乗じた。

(297万円―284万円)×17/30=73,666円

※ 増額について

被害者の傷害は,脳の損傷(外傷性両側硬膜下血腫,外傷性クモ膜下出血,水頭症など)をともなうものであり,通常生命の危険があるものであり,かつ,実際に生命が危ぶまれる状態であったことから,基準額を30%増額するのが妥当である。

 

第2 後遺障害分

1 後遺障害逸失利益(9,836,836円)

   自動車損害賠償保障法施行令別表第一第1級1号「神経系統の機能又は

精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」

基礎収入     3,612,500円

労働能力喪失率  100%

就労可能年数   3年(ライプニッツ係数 2.723)

後遺障害逸失利益 9,836,838円(3,612,500円×2.723)

※ 基礎収入について

賃金センサス平成28年第1巻第1表男子学歴計70歳の平均年収である3,612,500円を基礎収入とするのが妥当である。

※ 就労可能年数について

症状固定日である平成28年6月22日時点で83歳である。平成26年男子簡易生命表によると平均余命は7.26年であり,2分の1を就労可能年数として計算すると,3年(少数点以下切捨て)となる。

(a) Hスーパー

被害者は妻に先立たれ,事故時にはS市で一人暮らしをしていた。被害者が本件事故に遭ったのは,自宅からHスーパーへと向かう途中のことであった。Hスーパーは,被害者が創業した会社であるが,長男に譲った後も,毎日午前6時半頃にHスーパーで,社員が出勤するまでの間掃除や陳列物の整理をしていた。

(b) 株式会社I土建

被害者は,Hスーパーを創業し経営していたことから経営知識・経験,財務・会計知識,労務管理知識・経験があったことから,二男が代表取締役をする株式会社I土建の監査役に就任し,監査業務を行い,株主総会・役員会へも出席していた。

 

2 後遺障害慰謝料(33,600,000円

本人  28,000,000円(自動車損害賠償保障法施行令別表第一第1級1号)

近親者  5,600,000円

合計  33,600,000円

※ 本人の後遺障害慰謝料は赤い本の基準額

※ 近親者の慰謝料について

     近親者は長男Y,二男ⅹ,長女Tの3人である。

本件事故により死亡に比肩するような精神的苦痛を受けたものであるから,近親者の慰謝料としては本人分の2割相当額が妥当である。

28,000,000円×0.20=5,600,000円

 

3 将来介護費(26,195,884円

家政婦介護料金  日額11,075円

紹介手数料    日額の12% 11,075円×0.12=1,32

9円

介護料は日額 12,404円(11,075円+1,329円)

平均余命年数 7年(ライプニッツ係数5.786)

合計 26,195,884円(12,404円×365日×5.786)

※ 介護の必要性について

被害者は,本件事故以前は自宅マンションに一人暮らしをしており,買い物,食事作り,入浴,掃除,ゴミの分別などは,すべて被害者一人で行っていた。

しかし,被害者は,本件事故の極めて重篤な傷害及び後遺障害により,以下のとおり介護を要する状態となった。

被害者は,独力での移動は困難であり,他人に車椅子に乗せてもらって押してもらうことを要する。また,衣服の着脱もできず,洗顔,歯磨き,入浴も他人の介助を要する。被害者は,尿意・便意がないため一日中オムツをしていなければならず,その取替えも他人の介助を要する。食事については,身体の状態が良い日はテーブルに置かれたお粥等をスプーンでゆっくりと1時間掛けて食べることができることもあるが、それ以外の日には,他人による介助を要する。被害者は,身体の調子が悪い日には,「家(事故前に住んでいたマンション)に帰るので連れて行ってくれ」,誰もいないにもかかわらず「オイ」とか「誰だ」などと話しかけることがある。

以上のとおり,被害者には,24時間の介護・介助・見守りが必要である。

なお,被害者の介護保険の介護度は,最重度の介護を必要とする要介護4(「身体状態は様々であるが,食事・排せつ衣類着脱のいずれにも介護者の全面的な介助を必要とする。尿意,便意が伝達されない。」)が認定されている。

 

4 介護用品購入費用(756,363円)

   介護用品の内容については13の介護用品販売会社㈱ト―カイの見積書

の通り。

 

5 福祉自動車購入費(2,498,346円)

  ホンダ,トヨタ,ニッサン各社の福祉自動車のうち,車椅子1脚用,スロープタイプの福祉車両を条件として調査した。ホンダ,トヨタ,ニッサンの各車種の平均値から,さらに各社の平均値をとり,最終的に3社の平均値が2,498,346円となった。

 

 (介護自動車の必要性について)

被害者は後遺障害として両側硬膜下水腫により常に脳を圧迫している状態のため,定期的に樋口脳神経外科で診察することが必要である。また,本件事故以来血圧の変動が大きく血圧管理のため定期的に循環器内科での診察が必要である。さらに,本件事故後,体力・抵抗力の著しい低下により体調を崩すことが多く,その度に内科への通院が必要である。一日中何日間も自宅だけに居るとストレスが溜まり精神状態や体調が悪くなるので,お菓子屋に買い物に連れて行き被害者の好物を選んで食べさせたり,天気の良い日にはドライブに行くなどして気分転換をさせる必要がある。

このように,被害者は定期的に通院等のために移動をしなければならないが,車椅子での移動となるため,車椅子ごと車に乗れるスロープタイプの介護自動車が必要である。とくに雨の日などには,付添の家政婦だけでは被害者を車に乗せることに大変な困難を伴う状態である。

 

6 自宅新築費用(13,720,718円

新築総費用  24,380,000円

内訳)①建築費用(甲工務店)23,780,000円

②給水・排水工事(乙商会) 600,000円

比例按分割合  96/170.58

合計  13,720,718円(24,380,000円×96/170.58)

※ 自宅新築の必要性について

被害者は,本件事故以前は,5階建てマンションの1階の012室に一人で生活して住んでいた。本件事故により車椅子を使っての移動が必要となったところ,そのマンションには,玄関から部屋に入るまでに1段の段差があり,車椅子を通れるようにするためには1/15以下の勾配にする必要があるが,当マンションでは1/15以下の勾配が取れない状態である。

室内を車イスで通れるようにするためと全室バリアフリー化するためには,各ドア幅を大きくしたり廊下や間口の幅を広げたり必要がある。また,風呂,洗面所,トイレも同様に広くする必要がある。かかる改造をする場合には壁を削ると共に柱を削らねばならないので部分的な改造は困難であり部屋の全面的改造工事が必要である。設計事務所の見解では,これらの工事をするとマンション本体の強度に影響が出て,1階部分の壁が薄くなり柱も細くなってしまうことからマンションの構造が変わってしまうことになり,マンションの改造工事は他のマンション住民からも同意が得られないこと,耐震強度も低下することから改造工事は困難との判断であった。

以上の理由から自宅を新築することとなった。

※ 比例按分割合について

新築費については,被害者の本件事故前のマンションの012号室の床面積は96㎡であり,新築家屋の床面積は170.58㎡であることから,これを比例按分した。

 

7 将来治療費(2,684,785円)

Z脳神経外科   年間80,014円

W針灸院    年間384,000円

小計       年間464,014円

平均余命年数  7年(ライプニッツ係数 5.786)

合計 2,684,785円(464,014円×5.786)

※ 治療の必要性について(Z脳神経外科)

被害者は後遺障害として両側硬膜水腫がのこり,これが常に脳を圧迫しているため,定期的にZ脳神経外科病院で診察する必要がある。

平成28年9月から平成29年5月までの9か月間にかかった治療費(29,090円)と薬代(30,920円)の合計が60,010円である。これを平均すると,年間84,216円となる。

60,010円÷9×12=80,014円

※ 治療の必要性について(W針灸院)

症状固定後,E脳神経外科主治医のO医師から,身体の筋肉や関節が衰え硬直してしまわないよう,リハビリのため,週2~3回は身体の機能維持のため身体全体の筋肉・関節・両上・下肢の運動等のマッサージをするよう指示された。

そこで,被害者は,平成28年10月14日からJ市W針灸院の訪問マッサージを週2回(土曜,月曜)受け始めて,現在も継続して訪問マッサージを受けており,その費用は1回4,000円であるから,

年間384,000円となる。

(4,000円×2×4×12=384,000円)

 

8 将来雑費(763,752円)

紙おむつ    年間   72,000円

尿とりパット  年間   60,000円

  計     年間  132,000円

平均余命年数  7年(ライプニッツ係数 5.786)

合計 763,752円(132,000円×5.786)

※ 将来雑費の必要性について

被害者は,大小ともに失禁するので,常時紙おむつ及び尿とりパットが必要となった。

①紙おむつは,1日に2枚使用している。

15枚パック入り1,500円を1か月に4パック使用するため,年間で

72,000円となる。(1,500円×4×12=72,000円)

②尿とりパットは,1日6枚使用している。

18枚パック500円を1か月に10パック使用するため,年間で60,0

00円となる。(500円×10×12=60,000円)

 

第3 損害総合計

109,832,445円

以上